ホープ、世界の果てで人間を試す
2026年7月15日に公開されたホープ(Hope)は、『哭声/コクソン』『チェイサー』のナ・ホンジン監督が脚本と演出を手がけた叙事的なSFアクション・スリラーです。公開初日だけで33万人を動員し、その年の最高オープニングを記録。7月17日に100万人、20日に200万人、25日には累計300万人を突破し、韓国の夏の劇場を席巻しました。国内公開に先立ち第79回カンヌ国際映画祭のパルムドール・コンペティション部門に招待されて世界初上映され、上映直後には6〜7分間のスタンディングオベーションが続き「カンヌを揺るがした」と評されました。
物語の舞台は非武装地帯(DMZ)に近い架空の漁村ホポ港。村に現れた正体不明の存在——虎なのか、怪生命体「バミギル」なのか、あるいはその先の何かなのか——をめぐって村全体が非常事態に陥り、出張所長**ボムソク(ファン・ジョンミン)**が事件の渦中へ飛び込みます。チョ・インソンがソンギを、チョン・ホヨンが脇を固め、ナ・ホンジンならではの不吉さと人間の本性への問いがSFの外皮をまとって爆発します。監督は「不吉さで満たされた世界がこの映画の出発点」と語り、約500億ウォン規模の大作を完成させました。
撮影の舞台裏
ホープの驚くべき点は、作中の湿って古びた漁村ホポ港がCGでも新築セットでもなく、実際に人が暮らす村だということです。制作陣は全羅南道・海南郡北平面南倉里一帯の商店や住宅、旧バスターミナル、路地をリフォームし、村全体をひとつの巨大なオープンセットに変えました。撮影は2023年10月から約3か月間この村で行われ、序盤のシーンは近くの達梁鎮の道と海岸で撮られました。
一方、村外れの不気味な原生林は国内で見つからず、監督はルーマニアのカルパティア山脈へ。自ら2週間かけて20か所以上を下見した末にレテザット国立公園を選び、CGではなく生(なま)の森を収めるためにそこだけで29日間撮影しました。さらに慶尚南道**陜川(ハプチョン)**など異なる場所をつなぎ合わせ、「ホポ港」という単一の架空空間をつくり上げた編集とプロダクションデザインの功績も大きい作品です。撮影監督ホン・ギョンピョのカメラは狭い路地と海辺を行き来し、村に降りた不安を物質そのものとして捉えます。
ロケ地・旅行ガイド
おすすめコース(半日): ホポ映画通り → 達梁鎮城 → 海月楼・海岸デッキ道
- ホポ映画通り(南倉里):国道13号線を進むと「ホープ、映画の通り」の看板が出迎えます。旧南倉バスターミナルがホポ派出所のセットとして残り、ステラのパトカー、バミギルの足跡、精肉店や喫茶店のレトロな看板、俳優の壁画がファン必見のスポットです。
- 達梁鎮城:映画通りから東の海岸へ徒歩10〜15分。朝鮮初期の防御城壁が約50m残り、映画巡礼に歴史散策を添えられます。
- 海月楼:達梁鎮城から海岸沿いに徒歩5分。南倉の港と海を望む楼閣で、日の出・夕景のポイントです。
アクセス:ソウルから車で約4時間30分。公共交通なら光州・木浦から海南総合バスターミナルへ行き、莞島方面の各駅バスで南倉停留所下車。日本からは仁川・務安・光州空港経由が便利で、ゴールデンウィークや連休を利用した長距離ドライブ旅にも向きます。ベストシーズンは海風が心地よい春(4〜5月)と秋(9〜10月)。映画の湿った不穏な空気を味わうなら曇りの日もおすすめです。屋外開放型の映画通りは入場無料です。
ファンの聖地巡礼
公開と同時に海南郡が南倉里をホープ映画の通りとして整備したことで、静かな漁村が一躍K-コンテンツの拠点として注目を集めています。SNSでは #ホープロケ地、#海南南倉里、#ホポ港 のハッシュタグで写真があふれ、人気のフォトゾーンはホポ派出所セット前のステラのパトカーと、路地の壁のバミギルの足跡。ファン・ジョンミンが銃を撃った路地や、クムボク精肉店の看板の前で映画のワンシーンを再現する日本のファンも増えています。
舞台挨拶ではファン・ジョンミン、チョ・インソン、チョン・ホヨンが南倉を訪れて住民と交流し、話題になりました。撮影が実際の生活の場で行われたため、訪問時には住居や商店を尊重し、静かに見学するマナーが求められます。
周辺のグルメ・見どころ
- 南倉の港・海の幸:莞島と接する南倉は海苔・アワビ・テナガダコなどが豊富。港近くの食堂で旬の海鮮を味わえます。
- Netflix『東宮』との連携:同じ海南圏の兜率庵(トソルアム)はNetflixの話題作東宮のロケ地で、美黄寺や達磨山の稜線と合わせて巡るのに最適です。
- 地の果て・『鳴梁』:海南南端の地の果て(タンクッ)展望台と、イ・スンシン映画鳴梁の舞台・右水営一帯までつなげば、一日のシネマ紀行コースが完成します。
- 宿泊:南倉近くのペンションやゲストハウス、または旅の拠点となる木浦市内の宿を使えばKTX・バスでのアクセスが便利です。

